ナノバブルで歯科ユニット配管を清潔な環境に保つ
Dr. Nano® Mini for Dental
開発ストーリー

バイオフィルム汚染問題と
解決方法の模索

初期モデルのドクターナノDr. Nanoが開発されたのが2018年ですね。どういうきっかけだったのですか?

「歯科ユニットのウォーターラインが『バイオフィルム』で汚染されている」という報道がなされたのは2015年頃です。Dr. Nano(ドクターナノ)の監修をして下さっている歯科医の先生方から、「歯科医療への不安感を広げているのでどうにかしたい」というお話を伺い、一般社団法人新環境技術評議会で、解決方法の研究開発を開始しました。

一般的な化学薬品は、浮遊している細菌には効果がありますが、いったんバイオフィルムが形成されてしまうと、除去するのは困難ということが分かりました。仮に化学的方法でバイオフィルムを除去しようとすれば、生体への有害性が懸念されるレベルの濃度が必要になるのです。
読売新聞夕刊

バイオフィルムとはどういうものですか?

浴槽にお湯を張ったまま時間がたつと、内壁面にぬるぬるとした物質が付着します。これを「バイオフィルム」といい、細菌が生成する粘着性ポリマー(スライム)でできています。ユニットで治療に使われる水も、患者さんの歯がしみないように38℃程度に温められており、また夜間や休診時には水道水中の塩素が抜けてしまうので、浴槽同様、細菌が繁殖しやすくバイオフィルムができやすい環境です。

塩素や過酸化水素などの殺菌剤は、浮遊細菌の殺菌はできますが、バイオフィルムの中まで浸透しづらく、その下に潜んでいる生菌まで届きません。つまりバイオフィルムが、生菌の、殺菌剤に対する障壁(バリア)になっているのです。一部のバイオフィルムはフラッシングなどにより除去されますが、残った細菌は短時間でバイオフィルムを再生してしまいます。すなわち、一度バイオフィルムがウォーターラインに作られてしまうと、水道水だけでは除去が困難なのです。

ユニットのウォーターラインがバイオフィルム汚染されやすいという問題(Dental Unit Waterline Problem “DUWP”)に対しては欧米でも研究が進んでいますが、決定的な解決方法は見つかっていません。
バイオフィルムの模式図

バイオフィルムは化学薬品では除去できないのですか?

過酸化水素水や電解水による化学的除菌システムは以前から実用化されており、東北大学病院での検証で、 0.1%過酸化水素による化学的洗浄システムを備えたユニットでは、フラッシングなどの所定の手順を遵守すれば水質の管理が可能であることが示されています(江草宏先生ら、2016年)。しかし問題は「いったん形成されたバイオフィルムを除去するのは困難」という点です。仮に化学的方法でバイオフィルムを除去しようとすれば、生体への有害性が懸念されるレベルの濃度が必要になるのです(図1)。 そこで、「ナノバブル」によるバイオフィルムの物理的な剥離が有効となります。

バイオフィルム汚染の懸念すべき点は何でしょうか?

同じ東北大学病院の検証で、汚染されているユニットのウォーターライン内の複数箇所で水を採取したところ、「ハンドピースに近いほど、細菌数は多く、残留塩素濃度は低くなる」という結果が出ました(図2)。

この結果からは:
  • ハンドピースに近いほど細菌数が多いということは、ユニットのウォーターラインで観察される細菌は、水源(上流)からではなく、 ハンドピース側からホース に侵入している。
  • 侵入した細菌はハンドピース側から、ユニットの上流に向かって、増殖しながらバイオフィルムを形成していく。
  • バイオフィルム汚染されているユニットでは、塩素濃度は水道の元栓近くでは高くても、ウォーターラインを流れる中で、殺菌しながら消費されてしまい、ハンドピースに届くときには水道法基準値(0.1ppm)未満まで減少してしまう、ということが分かります。

ハンドピースは患者さんごとにホースから外して交換し、滅菌処理されますが、それでもウォーターライン内に細菌が検出されるのは、一部の細菌はハンドピースを通り越して、ホース内に到達していることになります。 ウォーターライン水が細菌汚染されている場合、治療に悪影響を及ぼすリスクはもちろんですが、最大の懸念は ハンドピース側から侵入する細菌に、患者さんの口腔内細菌が含まれる可能性が否定できない 点です。

先生方はハンドピースを、患者さんの口腔内にある時に動作停止することが多く、ハンドピースの水流を停止するバルブには、液だれ防止のために微量の水をサックバック(吸引)する性質があるからです。 前の患者さんの口腔内細菌がウォーターライン内に引き込まれているとすると、 院内感染の危険性 が懸念されます。

ナノバブル水の力

ナノバブルに注目したのはどうしてですか?

バブル水の洗浄剥離効果は以前から知られています。洗顔でも、きめ細かい泡の方が、洗浄効果は高くなることも分かっています。洗顔の泡のサイズはマイクロバブル程度(※)ですが、ナノレベル(マイクロの1/1000)の泡は、特に「壊れにくく、長持ちする上、水の周囲の性質を変える」ことにより、高い洗浄効果を示します。

※白く「見える」泡は、マイクロサイズ以上です。ナノサイズは光の波長より小さいため、目に見えません。

「水の周囲の性質を変えることにより、高い洗浄効果を示す」とはどういうことですか?

Dr. Nano(ドクターナノ)開発当初から、バイオフィルム除去の比較試験を何度も行っています。「水道水」(比較対象)はバイオフィルムの表面を滑るように流れてしまい、表面から少しずつしか削れないのに対し、「ナノバブル水」はバイオフィルムに早く浸透し、壁面との間に水が回り込んで一気に剥がすという挙動を観測しています。
生物が作るバイオフィルムはプラスに帯電しています。水分子は二つの水素原子と一つの酸素分子から構成されますが、二つの水素原子は酸素原子と直線上に配置されておらず、「く」字の配置をとり、酸素原子側がマイナス、水素原子側がプラスに帯電されています。そのため、水だけでは、バイオフィルムの表面と結合、反発を起こし、バイオフィルムの中には浸透しづらいのです。

一方、ナノバブルは、マイナスに帯電しています。ナノバブル水では、ナノバブルがバイオフィルムを電気的に中性( 非イオン化)とすることで、水分子はバイオフィルムの帯電に邪魔されず、中に浸透しやすくなるのだと考えています。

口腔内バイオフィルム(プラーク)に対しても、イオン系洗口剤はバイオフィルムに浸透しづらく、非イオン系はバイオフィルムに浸透しやすいのと同じ原理です。

ナノバブルを作り出すメカニズムを教えて下さい。

ナノバブルを生成する代表的な方法に「キャビテーション」があります。キャビテーションとはスクリューを高速で旋回させることで、旋回流により水中の圧力にむらが生じ、水中に溶けていた気体(空気)が溶出したり、外気を吸引しながら旋回流に巻き込み、粉砕したりすることで、ナノバブルを発生させる方法です。

例えば、船舶が進むと後方に泡の筋が見えます。これはスクリューが回転して後方に水を高圧で押し出す際に、スクリュー直前の水は急激に減圧されるため、溶けきれなくなった空気が泡となって溶出しているものです。

ドクターナノDr. Nanoの強み

ドクターナノ ミニDr. Nano Miniがナノバブルを発生させる構造にはどんな工夫があるのですか?

キャビテーションはスクリューを高速で回せば起こせるのですが、大掛かりな装置や動力が必要です。しかし、ユニットのジャンクション部(取付部)は狭小で、音や振動は禁物です。また、その後登場するナノバブルシャワーヘッドくらいのサイズに大流量(毎分8-15L)の水を通せば、比較的簡単にナノバブルを発生することができるのですが、ユニットの水量はシリンジで毎分100mL、エンジン・タービンで毎分20-50mL程度しかありません。

そこでDr. Nano / Dr. Nano Mini(ドクターナノ ミニ)は、内部構造により水を加速させ、管の中に固定したスクリューネジに衝突させることにより、キャビテーションを起こさせるようにしました。 この新発想により、歯科ユニット用に、小流量でも、動力も使わずに水道圧だけで、ナノバブルを発生させることができるようになりました。

ドクターナノDr. Nanoのメリット・デメリットと、ミニMiniを開発した動機を教えて下さい。

ナノバブルの常時供給、メンテナンスフリー

ナノバブルは極小で、「浮上速度が極めて遅く、寿命が長い」という特徴があります。 Dr. Nano / Dr. Nano Mini(ドクターナノ ミニ)取り付け後は、ナノバブルをユニットに常時供給できるため、休診時間、休診日にバイオフィルムを剥離し、あるいは細菌が混入してもバイオフィルムが付着しづらい環境が維持されるのが最大のメリットです。また、消耗品や交換部品も不要でメンテナンスフリーです。動力も使わず、可動部も無いことから故障の心配もありません。

しかし、次第に海外からの問い合わせを頂くようになると、Dr. Nano(ドクターナノ)は国内特許(特許第6770276)に基づく製品で輸出はできないことが分かりました。そこで海外の事情にも合わせて新たに設計し、国際特許を出願して製品化をしたのがDr. Nano Mini(ドクターナノミニ)です。

Dr. Nano Mini 小型化と取付方法の簡略化

海外では先生自らDIYで取り付けることが多いと聞きました。そこで狭いジャンクションボックス内に、誰でも取り付けできるように、一層の小型化を追求した結果、全長は従来モデルの約半分になりました。また既設のユニットにも取り付けしやすくするために、専用ソケットも開発しました。

専用ソケットとは何ですか?

Dr.Nano Mini(ドクターナノ ミニ)本体に付属する部品(無償のオプションパーツ)です。本体の両端はオネジですが、専用ソケットを片端に装着するとメネジになります。既設のユニットのジャンクションボックスでは、水道の立ち上がりとユニット給水口とが通常、フレキ管で配管されています。Dr. Nanoは水道の立ち上がりの直後か、ユニット給水口の直前に設置をしますが、フレキ管は両端メネジですので、その反対側は必ずオネジになっています。

そこで、いずれかスペースが広い側にある、既設のフレキ管をはずし、最短40mm後方にセットバックしてDr. Nano Miniの設置スペースが確保できれば、オネジ→専用ソケット→Dr. Nano Mini(両端オネジ)→はずしたフレキ管(メネジ)の順に装着するだけで、簡単に取り付けることができます。

ドクターナノDr. Nanoは専門業者でなくとも取り付けして問題はないのですか?

水道の蛇口と、浄水器や洗濯機を接続する配管工事は誰がやっても問題がないように、止水栓がついている水道の立ち上がりと、ユニット給水口の間にDr. Nanoを取り付けするのは、DIYで問題ありません。

また、取り付けがユニットの改造に当たらないかという質問も頂きますが、日本の複数のユニットメーカーさんに確認して頂いたところ、医薬品医療機器総合機構(PMDA)からも、「改造には当たらず、唯の配管であればユニット内部に設置しても認証型番変更の必要もない」との回答を頂いていると聞いています。

ドクターナノミニDr. Nano Miniと初期モデルでは、構造や性能に違いはありますか?

Dr. Nano Mini(ドクターナノ・ミニ)は新たな特許に基づく新設計で、小型化するため構造は大幅に変更しています。水漏れ防止構造も従来モデルはひとつでしたが、Miniは二重にしてあります。これらを実現するには1/100mm精度の超精密加工や慎重な組み立てが必要で、加工、組み立て、検査に至るまで全て日本国内にて行っています。

性能面では、シリンジの毎分100mLでの実験ではバイオフィルム剥離効果は同等の結果が得られていますが、それ以下の極小流量ではMiniの方が若干効果ありそうな感触です。SDGsも重視しています。ナノバブル水の原料は、水と溶けている空気だけの天然素材ですし、消耗品や交換部品、電気や動力も不要でメンテナンスフリーです。

またDr. Nano Miniではパッケージなどのエコ簡易化も取り入れています。これらの点が評価され、「iFデザインアワード」を受賞することができました。

ドクターナノ ミニDr. Nano Miniを取り付ければユニットのウォーターライン除菌は完璧ですか?

細菌には種類も多く、ひとつの方法だけで完全な除菌が実現することはありません。ナノバブル水もバイオフィルムを剥離除去しますが、殺菌能はほとんどありません。 一方、化学薬品は高濃度にすると、患者さんの人体やハンドピースなど金属部品に影響を及ぼす恐れが懸念されるため、安全性を優先して低濃度とせざるを得ず、バイオフィルム除去効果は下がります。 また化学薬品の組み合わは化学反応する可能性があり、注意を要しますが、Dr. Nano Miniの生成するナノバブル水の原料は「水と空気」ですので、化学薬品とのバッティングはありません。

あらためて化学薬品とナノバブル水の機能を整理すると次のようになります。
  • ・生体に安全なレベルの化学薬品は、遊離浮遊細菌の殺菌効果はあるものの、いったん形成されたバイオフィルムを除去するのは困難
  • ・ナノバブル水はバイオフィルムの除去効果はあるが、殺菌能はほとんどないため、水道水中の塩素による殺菌効果を期待
  • ・しかし、バイオフィルム汚染されているユニットでは、ハンドピースに近いほど、残留塩素濃度は低くなる傾向がある
そこで、既にバイオフィルム汚染されているユニットに対しては、Dr. Nano Miniは、過酸化水素水や電解水による化学的除菌システムとの併用による相乗効果が期待できると考えています。

もちろん、新しいユニットについては、一番の厄介な問題となるバイオフィルム形成の予防を目的として、 Dr. Nano Miniの導入をお勧めします。

ナノバブル水は歯科治療における効果はありますか?

Dr. Nano Mini(ドクターナノ ミニ)設置後はウォーターラインだけでなく、「スピットン水」も「シリンジ水」もナノバブル水になります。実際に、お使いの先生方からも、「プラーク・歯石が取れやすくなった」、「止血が早くなった」などの体験談を頂いています。

Dr. Nano Miniが生成するナノバブル水は、ウォーターライン内のバイオフィルムだけでなく、口腔内のバイオフィルムに対しても剥離、浸透する効果があると考えています。

浸透効果については、プラスに帯電しているバイオフィルムを、マイナスに帯電しているナノバブルが「非イオン化」することによるものだとすると、イオン系の洗口殺菌剤への応用も考えられます。

主にマイナスに帯電しているイオン系の洗口殺菌剤は、プラスに帯電している口腔内バイオフィルムの表面と吸着してしまい、中には浸透しづらいという性質があります。 そこで、イオン系の洗口殺菌剤を使われる前に、シリンジ水で洗浄、あるいはうがい水で患者さんに含嗽して頂いて、口腔内バイオフィルムを非イオン化すれば、イオン系の洗口殺菌剤でもバイオフィルムへ浸透しやすくなるという効果が期待されます。